医師の養生~根来秀行先生(2)

患者の健康のために奔走する医師の方々。
驚きの若さと意欲を持ち、日々パワフルに診療にあたるドクターたちの養生法。
先生方の24時間&健康ハウツーを大公開!

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ハーバード大学医学部客員教授・パリ大学医学部客員教授
根来秀行先生

体内時計に合わせた生活を送ることで心身ともに健康に

集中力は90分が限度。体内リズムに合わせて効率的に活動する

現代は夜中まで残業続きの生活や、夜型の生活、睡眠不足の人が多いですよね。

人間の身体は得意とする時間帯が決まっています。体力は朝起きてから7~8時間後にMAXに達し、集中力は朝9時くらいから最大限になります。発想力や思考力は、交感神経が高まり、活動に必要なホルモンの分泌も多くなる午後2時~5時が向いています。このような身体のリズムに合わせて、与えられた時間で集中して効率よく行動することが大切です。

集中力は90分のリズムで繰り返していて、90分以上続くと、交感神経が優位になりすぎて、副交感神経にスイッチできず、リラックスできません。その結果、仕事の効率も下がるし、身体も休まることなくストレスが夜まで続いてしまいます。すると、よく眠れず睡眠不足を招きます。90分集中したら、15分休憩を入れてリラックスすることが大切です。

昼間、緊張やストレスで交感神経が働きすぎている時は、腹式呼吸で副交感神経とのバランスを整えるのも一つの手。腹式呼吸を行うと、リラックス効果が得られやすくなります。

もっと真実を知りたい!あくなき探究心とクリエイティブな発想

今まで大きな病気をしたこともなく、小中高校は皆出席でした。その後、医師として働くうちに治療の壁にぶつかったのです。なぜ目の前の患者さんの病気を治療できないのか、その真実を知りたい、その思いから研究の道へ入りました。研究成果を臨床に活かせるよう心がけています。

研究は手間がかかる割に、なかなか結果が出なくて我慢比べのような世界です。最初に手技を習得するまでの2~3カ月を面倒なことととらえるのではなく、なんとか効率的にできないか、何か楽しみはないかと見つけてきました。壁にぶつかった時、それをクリアするためにどうしたらいいのか、与えられたことを好きになるにはどうしたらよいのか、そんなことを考えるのが好きなんですね。

何かを生み出すことが好き。だから今もクリエイティブな発想を常に持ち続けています。それが若さを保つ秘訣かもしれませんね。

体内時計を整えるポイント~午前編

人間の体内時計は24時間11分にセットされているが、朝、太陽の光を浴びることで11分巻き戻され、24時間にリセットされる。

1)「早寝早起き」ではなく「早起き早寝」
大切なのは「早く起きること」。朝は体内時計をリセットするために、もっとも大切な時間。いつもより1~2時間の早起きが、体内時計のリズムを正す。

2)朝起きたら太陽の光を浴びる

早起きしたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びること。体内時計にもっとも大きな影響を及ぼすのが光である。曇りや雨の日でも窓辺に少しいるだけでOK。

3)朝食は起きてから1時間以内に
太陽の光が目に届いてから1時間以内に食事をすることで、腹時計の役割を持つ「子時計」が働き、そして「親時計」と連動して動き始める。

体内時計を活かすポイント~日中編

身体のリズムに従って生活を組み立てると、人間が本来持っている力を無駄なく発揮することができ、効率も成果も向上する!

午前・・・集中力アップの時間帯で仕事がはかどる
午前中は脳が完全に覚醒モードになり、セロトニン分泌が高まって気分がよくなり、集中力がアップする。判断ミスの許されない仕事は午前中にするのがベスト。

午後・・・15分の休憩タイムで効率アップ
昼食も終わり、午後2時頃。この時間は体温が下がり、ついつい睡魔が襲ってしまう。そんな時は、思い切って15分以内の休憩(昼寝)をとることをオススメ。

夕方・・・筋トレが効果的なのは夕方の時間帯

夕方5時~6時は、副交感神経が優位になり、筋肉の柔軟性がピークに。退社時に「筋トレ(無酸素運動)」を5分、帰宅時にウォーキング(有酸素運動)15分程度の運動を。

質の高い睡眠に導く根来式腹式呼吸

バージョン1の軽めの腹式呼吸から、バージョン4のもっとも深い腹式呼吸まで、4段階あります。

バージョン1・軽い腹式呼吸で以下を行う
1)姿勢を楽にして座る。
2)お腹と胸の動きに意識を向け、ゆっくり深呼吸する。
3)おへその上に軽く手をのせ、息を吸う時に数センチお腹がふくらむようにする。
4)息を吐く時にお腹が数センチへこむことを感じとり、その時胸が上がることにも意識を向ける。

バージョン2・深い腹式呼吸で以下を行う
1)息を吸ったら10、吐いたら9というように1カウント減らしながら、10から1までカウントダウンして呼吸する。
2)1になった時にリラックスできていないと感じたら、もう一度繰り返す。

バージョン3/深い腹式呼吸で以下を行う
1)1から4まで数えながら、息をゆっくり吸う。
2)今度は4から1まで数えながら、息をゆっくり吐く。
3)これを数回繰り返す。

バージョン4/深い腹式呼吸で以下を行う
1)息をゆっくり吸ったら、2~3秒ほど息を止める。
2)息をゆっくり吐いたら、2~3秒ほど息を止める。
3)これを数回繰り返す。

(TRINITY49号より)