医師の養生~帯津良一先生(1)

患者の健康のために奔走する医師の方々。
驚きの若さと意欲を持ち、日々パワフルに診療にあたるドクターたちの養生法。
先生方の24時間&健康ハウツーを大公開!

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帯津三敬病院 名誉院長
帯津良一先生
1936年生まれ。東京大学医学部卒。ホリスティック医学を実践するがん診療の第一人者。日本ホリスティック医学協会会長。http://www.obitsusankei.or.jp

Q:あと1週間の命だったら、何をしますか?
A:今までと同じですよ。仕事をやるから酒も美味いしね。そのためには昼間に働いていたほうがいいし、汗かいて少し苦労したほうが、晩酌が美味いんですよ。

「気功、そして診療」生命場を高める医師としての天命

最高の逝き方は理想の大道の途中でバタンと倒れること

健康法と養生法は違うんです。テレビでもよく出ている健康法の目的は、病気をなくして、少しでも長生きって言うでしょう。養生法における本当の健康は、いつも心に煮えたぎるものがないといけない。向上して人生をしっかり生きようという志。少しくらい身体に何かあったとしても、ときめくほうがいいんですよ。

私は、夏目漱石の死生観が好きです。「理想の大道を行き尽くして、途上に倒れる刹那に、わが過去を一瞥のうちに縮め得て初めて合点がいくのである」理想を求めて、ドーンと倒れて死ねばいいんですね。だから私の理想な仕事中に死ぬことなんです。前進、前進してバタンと。または谷中の居酒屋の前で倒れるというイメージもあるし、トンカツをくわえたまま倒れるのもいい。病院の廊下で倒れて、看護婦さんの胸の谷間に顔をうずめて死ぬというのも皆に言ってあります(笑)。

ホリスティック医学は、人間まるごとを考えます。病というステージだけではなくて、生老病死すべてのステージ、死後の世界も対象にしますから、どうしても養生を考えるのです。昔の養生は、身体をいたわって病を未然に防ぎ、天寿を全うするという”守りの養生”でした。

ですが、これからの養生は”攻めの養生”。命ある間、日々勝ち取っていく。そして、死ぬ日を最高に持っていって、死後の世界に飛び込む。できたら生きているうちに生と死を統合して、生死一如の境地になって死後の世界に入るのが一番いいですね。

喜んで食べるという心のときめきが自然治癒力を上げる

そのために何をするかというと、私の場合は「目には青葉、朝の気功に夜の酒」。「目には青葉」は、旬の食材を心をときめかせて食べることで、食養生と心の養生ですよね。「朝の気功」は、毎朝、患者さんとやっている、気の養生です。最後に「夜の酒」。

これこそ生き甲斐。最後の晩餐ですから、ときめきますよ。休肝日なんかつくらず、愛着を持って飲んでいるわけですよね。人生、ときめかないといけないんです。ときめきには食材の不利補って余りある恩恵があります。自然治癒力がダーッと上がると思って、大いに喜んで食べたらいいですね。

虚空へと帰るために生命エネルギーを高める修行の場

身体の中には、電磁場や重力場など、いろんな素粒子に対応した場があるのですが、そこに中国医学でいう気のような生命に関連した場があると思うんですよね。そのエネルギーが命。我々は生命エネルギーを常に高め、溢れ出させることによって、周囲に影響を与えていくという状況にあると思うんです。

生命場のエネルギーが下降した時に、回復するために生命場に備わっている力が自然治癒力。そして生命と自然治癒力を合わせたものが生命力です。死んだら肉体は滅びるけど、命のエネルギーはずっと持続していくでしょう。私はね、輪廻転生はなくて、150億年のはるか彼方の虚空に帰るだけだと思っているんです。

我々はビッグバンで宇宙が生まれてから約150億年かけて地球に降り立った。そしてまた150億年かけて虚空に帰るという300億年の循環にあるわけです。神様が地球を何のためにつくったかというと、150億年の旅路で目減りしたエネルギーを自分で補い、帰りのエネルギーにするための修行の場としてつくったと思うのです。

元気な理由は、死ぬまで前進する心。自己実現に限界はない。

感情は生命エネルギーに影響を与えます。だからネガティブな感情はできるだけ持たないほうがいい。性格もあるから仕方ないと思うのですが、怒りは命のエネルギーを落とすと思うんです。私は怒ることはほとんどありません。人生において、”これは譲れない”と我を通す出来事って、実はそんなにないんですよ。どっちでもいいことが多くて、相手に任せておけばいいわけで、するとあまり怒ることもないわけ。

肉体は老化現象があるから、いくら頑張ってもいつかは衰えます。その代わりに、命のエネルギーは上昇気流に乗って、限りなく上がっていくことが出来る。それは自己実現と同じで、向上しようと努力しないといけない。私は生きているうちは働いているのが好きだし、老後に花鳥風月を愛でて生きたいなんて全然思わない。原稿や講演の依頼も、やることがあるのでありがたいし、何もないとおかしくなる。元気でいるには、自分の人生に対して積極的なほうがいいですよね。とにかく困難は乗り越えて前へ進むと。自己実現に終わりはないので常に前進です。

(TRINITY49号より)