胃を酷使していませんか?胃 が健康だとすべてがうまくいく-2

健康な身体をつくる第一歩!胃のメインの働き ~消化力掃除力

胃は、口から入った食べ物を消化して腸に送り、強烈な胃酸で細菌や
ウイルスなどを殺菌する。また、食欲をつかさどるホルモンを出す働きもある。
では胃のメインの活動である消化作用はどうなっているのだろう?

胃のゆるみと空腹時の運動がキーワード

「胃に食べ物が入ると、胃の天井部がゆるんで受け入れます。この働きが悪い人に、なんとなく胃の調子が悪い機能性胃腸症の人が多いですね」(江田先生)。胃のゆるみは自律神経が関連し、交感神経が高まりやすく緊張しやすい人に、ゆるみが悪い人が多いとされる。胃の拡張が悪いと食べ物が十分に噛み砕かれず、十二指腸との連携が滞って、結果的に胃もたれ、早くお腹がいっぱいになる、胃のなかの圧力が高まってみぞおちが痛む、食べ物が詰まった感じがするといったさまざまな不快感が出てくるのだという。

また、消化以外にも、寝ている間など空腹時に働く胃の掃除力が大切だと江田先生。
「胃に食べ物が入ると、胃の出口付近が1分間に3回、規則的に動いて食べ物を細かく砕き、2㎜以下になったものを胃から排出します。この運動は3~4時間続きます。深夜から明け方までの空腹時、今度は胃の上部が強く収縮して、食べ物の残りカスや役目を終えて自然死した胃の細胞を一気に掃除します」。

胃の掃除が十分にできていないと、胃もたれにつながり、さまざまな胃の不調を引き起こすことに。やむを得ず夕食の時間が遅くなってしまう場合は、左上の胃内停滞時間を参考に消化の悪い食事を避けるようにしたい。

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食べ物が胃のなかで留まる時間は?
同じカロリーで比べると、胃の動く時間が最小で済むのがたんぱく質、次が炭水化物。脂肪は最も停滞する。

米飯  2時間
パン  2時間45分
餅  2時間30分
半熟卵  1時間30分
ひらめ刺身 2時間30分
ビフテキ  4時間15分
バター(50g)12時間
胃内停滞時間(100g)

胃の主な働きは3つ
①消化
胃に食べ物が入ると胃液が放出され、消化活動を開始。たんぱく質分解酵素ペプシンがたんぱく質を③分子レベルまで分解するため、腸で吸収されすみやかに筋肉や血液の素材として作用する。

②殺菌
胃液の主成分である胃酸(pH1~2の強酸!)が、食べ物に含まれる細菌、菌類、寄生虫などを抹殺する。温かくて湿り気がある体内は細菌の増殖に最適の環境。胃での殺菌は重要な役割。

③ホルモン分泌
消化作用に伴い、胃のなかではガストリン、グレリンという消化管ホルモンが分泌される。前者は胃酸分泌を促して消化をスムーズにし、後者は脳の視床下部に働いて食欲を増進させる。


江田 証先生

日本消化器病学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染症認定医。日本抗加齢医学会専門医。「江田クリニック」院長として、毎日200人近くの診察と多数の胃内視鏡検査および大腸内視鏡検査を行っている。
http://www.edaclinic.com


『医者が患者に教えない病気の真実』(幻冬舎)、『なぜ、胃が健康だと人生はうまくいくのか』(学研パブリッシング)。胃のメカニズムと病気の原因、対処法を丁寧に解説。

(TRINITY48号より)