免疫力を上げる三種の神器~腸~(5)

アプローチはどこからでもOK!
心身増強のポイントは3つ、心・腸・血をケアして免疫力を活性

免疫の三本柱。一番気になるところはどこ? 「不調の場所から」「実践できるところから」。始める順序にルールはナシ。何か一つ始めたら、相乗効果で免疫は確実に高まっていく!

腸~脳より先に誕生!? 腸内工場は免疫の要

腸からのメッセージを、私たちはどれくらい受け取れているだろう? トイレは健康チェックの絶好の機会。便の状態から分かるのは、腸内環境のバランス。そのバランスの良し悪しが、免疫力の状態に直結している。さらに、心の安定までを腸が握っているというから、私たちにとっては、まさに健康の要なのだ。

「心と身体の免疫を高めたいなら腸内環境を整えることが大切です」と、腸研究のエキスパートである藤田紘一郎先生。実に免疫の70%を握っているのが腸だという。

腸内で製造される免疫細胞は、日々ガンなどの病気のリスクを攻撃し、そして心の幸せ感を司る神経伝達物質セロトニンの前駆体の90%も腸内で合成される。つまり腸内細菌の数を増やし、良い腸を保つことで、心と身体を強力にサポートできるということ。

「幸せな人生を歩みたい!」。そう思うならば、腸を労わり感謝することから始めてみるのも手。腸が私たちを守ってくれた証とも言えるうんちに感謝し、腸が喜ぶ食べ物と水を与えてあげる。腸にストレスをかけず、幸せになってもらうことが、私たちの心身の健康にも直結していく。

驚くほどシンプル、そして誰もが実践できる方法で、腸から幸せになる方法を藤田先生がレクチャー!

免疫力は腸力である
腸は免疫の7割を支える健康の砦

食物の消化・栄養吸収を行うほかに、免疫細胞の70%をつくり、ハッピーホルモンであるセロトニンの前駆体の90%を生み出す腸は、便秘・下痢という不調の域を超えて命そのものを司るといっても過言ではない。500種類と言われる腸内細菌が活性される環境をつくれば、免疫力がダイレクトにアップ! 方法はごく簡単。あとは実践あるのみ!

参考文献:『免疫力をアップする科学』ソフトバンク クリエイティブ   『腸内革命 腸は、第二の脳である』海竜社『ミネラルウォーターの処方箋』日東書院 (いずれも著者:藤田紘一郎)
  • 藤田 紘一郎先生

東京医科歯科大学医学部卒、東京大学医学系大学院博士課程修了。医学博士。東京医科歯科大学名誉教授。腸と水研究の第一人者。著書多数

低下し続ける免疫力、大きなカギは「腸内環境」

アトピーやぜんそく、うつ病などが年々増加傾向にある。日本人の死因で最も多いがん患者も増え続け、3人に一人ががんで亡くなっている。これらに共通するのは、「免疫力が低下すると起こる」ということ。その免疫を高める大きな鍵が「腸」。「免疫の70%が腸でつくられているのです」と、腸研究のエキスパートである藤田紘一郎先生。

「免疫を高めるには、いい腸を保つことが重要です。いい腸とは、腸内細菌がバランスよく住んでいる腸のこと。腸内細菌は人が生きるために絶対に必要ですが、腸内細菌自身も人の腸のなかでしか生きられないので腸を大事にするんです。O‐157が侵入したら追い出しますし、人間には野菜のセルロースを分解する酵素が実はありませんが、腸内細菌が分解してくれます。ビタミンBやビタミンCの合成も腸内細菌がやってくれます」

私たちは常に病気のリスクにさらされている。しかし、腸内環境が整い免疫が高ければ病気に対して身体は常に防衛機能を果たすことができる。極論をいえば「腸内環境を高めれば病気にならない」ということ。

「がん細胞を取り込むナチュラルキラー(NK)細胞は腸のなかの乳酸菌によって強くなりますが、非常に繊細なので食べ物やストレスの影響も受けやすい。ほかにもドーパミンやセロトニンなど幸せ感を司る大切な神経伝達物質の前駆体の90%も腸のなかでつくられています。

そして大事なのは便の量。生活様式や食事の変化などで60年前と比較して便の量が圧倒的に減っています。実は便の50%は腸内細菌。便の量が減っているということは腸内細菌の量も減っているということ。それだけ免疫が弱まっているんです」

では腸内細菌を増やすためにすべきことは? 「近年流行している断食は、精神的な達成感はあるかもしれませんが、腸に関してのみ言えば、お勧めできません。断食で腸内細菌が失われ、免疫力が一気に下がってしまうからです。やはり正しい食事や排便、生活習慣を改善していくことが、腸内環境を整えて免疫を高めるためには一番大切なんです」

常設部隊と緊急部隊の、二つの壁が免疫を守る!

免疫には、がん細胞を攻撃・破壊する最重要細胞のNK細胞を含む自然免疫系のほか、抗体や胸腺由来の細胞で抗体産生を調節しているT細胞を使って細菌やウイルスと戦う獲得免疫系の2種類がある。

通常体内では自然免疫系が働いているが、それだけでは防御ができなくなると緊急部隊である獲得免疫が発動を始めるのだ。

その獲得免疫系の最大拠点となるのが腸。特にT細胞は免疫細胞の要である腸のパイエル板で鍛えられることで更に活性化し、主にがん細胞などを攻撃する力が更に強まると言われている。

そもそも腸ってどんな臓器?

小腸
約4~7mで、上部5分の2は空腸といい、絨毛構造が消化・吸収を担う。残り5分の3は回腸といい、リンパ小節が集合した腸の最大免疫組織のパイエル板が発達している。

大腸
1.5mほどで盲腸・結腸・直腸からなる。上部では水と電解質を吸収し、株では便をつくる。ビフィズス菌のほか、悪玉菌であるバクテロイデスや大腸菌を持つ。

免疫の餌をしっかりと腸に与えて!
心も支える腸のスーパーパワー

イライラする、鬱々としてしまう……。感情は腸にも影響を与えるが、心模様を左右するのも実は腸。「心身の免疫を高めるには、腸内細菌の餌になるものを腸に適切に与え、数と種類を増やせばいいのです」と藤田先生。免疫&幸せホルモンのタンクともいえる腸を元気にすることこそ、心のバランスを保つ秘訣。つまり腸が健全に働くようにご褒美を与えること。

腸で免疫を生み出すには

  • 穀類、野菜類、豆類、果物類の摂取
  • 納豆、ヨーグルト、キムチなどの発酵食品の摂取
  • 食物繊維、オリゴ糖、糖アルコール類を含む食品の摂取
  • 保存料などの食品添加物を控える

藤田先生からのメッセージ「腸は最重要臓器の一つ。健全な腸あってこその免疫です。腸の働きは、私たちの命を左右すると言っても過言ではありません。心が不安定な方ほど、腸内環境を大切にしてみてください」

(TRINITY45号より)