人生達観のドクターが語るリラックスの神髄

比べず、羨まず、利他に生きれば困ったことは起こらない

人生達観のドクター
医学博士 浜松医科大学 名誉教授
高田明和先生

慶應義塾大学医学部大学院修了。専門は生理学、血液学、脳科学。ニューヨーク州立大学大学院助教授、浜松医科大学教授を経て、現在、同大学名誉教授。全国で講演活動を行う。近著に『脳とこころがホッとする健康学』(すばる舎)ほか

リラックスするということは、何か別のことがあるからリラックスできるんですよ。たとえば毎日が日曜日だったら耐えられないけれど、1週間に5日働いているから土日が楽しいのと同じ。ずっと固いものが続いた時にゆるむのがリラックスです。怠惰というのは常に何もしないこと。毎日が日曜日なのが怠惰。

ブッダはね、「他人のために尽くすことだけを考えれば幸せになれる」と言っているんですよ。実際に利他のために生きると、必ず味方が出てきます。あなたを助けようとする人がね。私は医学・科学の分野で生きてきたから、カルマや因果応報を科学に直接結び付けることはできないと思うけれど、間接的にはあるかもしれません。

人間は、他人のことさえ考えていれば必ず幸せになれる。たとえば一生懸命、社会のために働いている人がいますよね。その人が不幸になっちゃったら、社会は成り立たなくなるから、そういう人を助けるように世界が働くのですよ。

または、いつも陰気なことを言っている人もいますが、そんな人とは誰も付き合いたいと思わないですよね。宗教と科学が関係あるとは言わないまでも、客観的にも厳然たる、因縁や業といった宗教的な法則が働くのです。だから、だんだん歳をとって、いろんな人の人生を見ていると、宗教で言っていることと、結果的に現実社会で起きていることは同じだということが分かるのです。

他人のためになりそうなことをやってあげればいい。もちろん最初からそんな立派な人間はいませんから、下心があってもいいので、訓練でやっていくうちに良いことが起こってくる。これがリラックスして生きるコツだと思います。

私はいつも「困ったことは起こらない」という言霊を大切にしていて、これは世界でも鉄則の言霊です。“Let it be(そのままにしておきなさい)”“ケ・セラ・セラ(なるようにしかならない)”というように、人々に伝えられている教えなんですよね。我々は他人と自分を比べては羨むけれども、結局はその人が幸せかどうかなんて分からないのだから、比べても仕方ないのです。医者の一家だって家庭内はバラバラのところもあるし、成功して名声を得てもガンになる人もいる。羨むべき人生なんて本当はないってこと。

自分が持っているものを大切にしましょう。一生懸命やってそれでも比べてしまったら、「困ったことは起こらない」と言う。呼吸をする。散歩でもショッピングでも、気がまぎれることをして、考えない工夫をすることです。

ブッダも実践した入息出息に意識を向ける呼吸の実況中継

1、背筋を伸ばして、アゴを引いて座る。椅子でも坐禅でもOK。鼻の出入り口に意識を集中させて行う。

2、息を吐きながら「私は喜びを感じながら息を吐いています」と、心のなかで繰り返し実況中継をする。

3、息を吸いながら「私は喜びを感じながら息を吸っています」と同様に行う。鼻を通る空気の流れを感じて。

(TRINITY47号より)