患者の健康のために奔走する医師の方々。
驚きの若さと意欲を持ち、日々パワフルに診療にあたるドクターたちの養生法。
先生方の24時間&健康ハウツーを大公開!
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ハーバード大学医学部客員教授・パリ大学医学部客員教授
根来秀行先生
医師・医学博士。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。パリ大学客員教授。事業構想大学院大学理事・教授。著書に『24時間の過ごし方』(幻冬舎)、『健康は「時間」で決まる』(かんき出版)、『長生きの健康常識はウソばかり』(エクスナレッジ)http://www.mpd.ac.jp
Q:あと1週間の命だったら、何をしますか?
A:特別なことをするより、日常と変わらず過ごしますね。私は日頃から、1日1日を大切にして過ごしているので、特に何かしようとは思いません。
体内時計に合わせた生活を送ることで心身ともに健康に
「時計遺伝子」をうまく活用して身体を整える
私は日本と海外の医学の最前線で、臨床や医学研究に携わってきました。世界最先端の医学研究の拠点・ハーバード大学医学部で研究を続けるなかで、一番すごいのは人間の身体だということを実感しました。そして、その身体が持っている潜在能力を最大限に引き出すのが「時計遺伝子」であって、この「時計遺伝子」をうまく利用することで、さまざまな病気を予防できることがわかってきたのです。
人間の身体には心臓や血管、内臓、皮膚など約60兆個の細胞があって、これらがすべて「時計遺伝子」を持っています。それをオーケストラの指揮者のようにまとめるのが「親時計」、全身の細胞のオーケストラメンバーが「子時計」となって、体内時計を動かしています。
時計遺伝子のスイッチは、太陽の光です。目の奥にある視交叉上核がマスタークロックとして時計遺伝子を統率していて、光が目の奥の親時計に届くと、60兆個の子時計にシグナルを送って、体内時計のリセットを促して動き始めるのです。早起きしないと、体内時計がリセットされず、どんどん生活時間が後ろにずれてしまいます。
人間には、睡眠覚醒リズム、メラトニンリズム、深部体温リズムの3つの生体リズムがあります。深部体温とは内臓など身体の深い部分の温度のことで、昼間に高くて夜は低くなります。深部体温を上げるには、食事や入浴、呼吸法で副交感神経を優位にするなどの方法があります。
不摂生で昼夜逆転した生活を送っていると、3つの生体リズムがずれて、心身が不調になります。海外旅行時の時差ボケも同様の理由から起こるものです。これを解消する方法が16時間の断食です。空腹が続くほど、体内時計を合わせる力が強くなるからです。
さらに、光のタイミングを食事時間と合わせることで、3つの生体リズムが同期してきます。
美容のために、太陽の光を浴びないほうがよいという考えもあるみたいですが、睡眠を促すホルモン「メラトニン」は朝日を浴びてから約15時間後に分泌が始まります。朝6時に起きると、夜9時頃から眠くなり、夜11時頃にはスムーズに眠りにつくことができます。それを知った上で、美容をとるか、健康をとるかはその人次第で考えていいんじゃないでしょうか。
根来先生の健康24時間ライフスタイル
7:30 起床・朝食はタンパク質をしっかり食べる
パン、サラダ、サンドイッチ、フルーツが定番。特にタンパク質はメラトニンの材料となるので、朝食に欠かせない。
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・5~10分の軽い筋トレ
腕立てや腹筋、自宅から駅までウォーキングするなどの軽い筋トレを。脂肪を燃焼させ、成長ホルモンを促す。
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愛車で通勤もリラックスタイム
取材当日、愛車に乗って颯爽と登場。分刻みのスケジュールをこなす多忙な先生は、移動中がリラックスタイム。仕事中のON(熱中する時間)とOFF(休憩時間)とのメリハリを大切に過ごしている。
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9:00 始業
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12:00 昼食・ランチは13時までに済ませる。
食事の時間は意識的に「〇〇時にとる」と決めている。朝食と昼食、昼食と夕食の間隔(約6時間)を同じにするのがポイント。
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仕事タイム・仕事の中心は、臨床・教育・研究
病院での臨床活動、国内外で教える立場、治療の壁を打ち破るための医学研究。3つのフィールドを大切にしている。
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21:00 帰宅
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24:00 就寝
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ハーバード大学とスカイプで打ち合せ
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25:00 通信
12時に寝たあと、夜中の1時に起きて、海外とのやりとりを1時間程度行う。その後は朝までぐっすりと睡眠。
(TRINITY49号より)