胃を酷使していませんか?胃が健康だとすべてがうまくいく-9

統合医療のカリスマドクターが直伝!
代替医療胃を治す

川嶋朗先生は、胃の不調を嘆く前に自分の生活を振り返り、胃をどれだけ酷使しているかに気づくべきだと言う。薬は本当に必要な時に必要なだけ。自分の身体は自分で守る。代替療法で胃を整える方法を教わった。

胃のためにできること、10カ条

1) よく噛む
2 )冷たいものを飲まない
3 )夜遅くの食事はスープに
4 )よく歩く
5 )質の良い食事をとる
6 )ストレス発散を心がける
7 )冷えをそのままにしない
8 )自分の身体のことを知る
9 )老いを受け入れる
10 )医者まかせにしない

胃に影響大! の冷え

身体を温めて胃の機能もアップ

万病のもとである「冷え」は胃にも大敵。身体が冷えると血めぐりが悪くなる→細胞に栄養が届かず老廃物がたまる→熱も伝わらないのでさらに冷える、という悪循環が起こり、胃の機能を低下させるのだ。まずは身体を温めよう。

身体を温める、食材を摂る

原則として色の濃いもの、北で穫れるもの、寒い時期に穫れるもの、味の濃いもの、根菜など地中で穫れるものが身体を温める。また、唐辛子やシナモンなどの香辛料、みそや納豆などの発酵食品もおすすめ。冷蔵庫で冷やした食べ物や飲み物はできるだけ避けること。


首や太もも、背中を温める

首、手首、足首には太い動脈が走っており、環境の影響を受けやすい場所。マフラーやレッグウォーマーでカバーしよう。また、太ももや腰など、筋肉の多い=血流の多い場所に湯たんぽを当てると全身が温まる。腹巻きはお腹だけでなく背中も温まるので効果的。

40℃以下の湯に10~30分入る

お風呂の湯が40℃以下だと、自律神経のうち副交感神経が優位になって身体がリラックスし、血管が拡張して血行が良くなり、身体が温まる。心臓が弱い人は半身浴、そうでない人は全身浴で。お風呂から上がったら、身体が冷えないうちにできるだけ早く寝ること。

筋肉をつける

筋肉が熱を生むため、筋肉がないと身体が冷える。特別な運動をしなくても、なるべく歩いたり階段を使うことを習慣にするといい。また、湯船のなかで足や手を伸ばし、力を入れてぐ~っと浴槽を押すだけでも効果がある。6秒以上力を入れて、3セットずつ行おう。

文明ボケが胃の病気をつくる

「機能性胃腸症という病気は最近になって認識されるようになったもので、昔はありませんでした。なんとなく胃の調子が悪いという人が増えたのはなぜか。昔と今の違いは? それは過保護です。文明ボケです」と川嶋朗先生。親が子どもを甘やかし、学校では先生が本気で叱ることもできない。だから社会に出てイヤなことがあると、すぐにストレスを感じてしまう。

川嶋先生によれば、ストレスが胃に穴をあけるメカニズムはこうだ。ストレスが高まると自律神経のうち交感神経が高まる→白血球のなかの顆粒球(白血球の6割を占め、強い殺菌能力で体内の細菌と戦う成分)が増える→自身が壊れる時に出す活性酸素も増える→胃のなかの活性酸素も増え、活性酸素が粘膜を破壊する。

ではストレスに強い身体をつくるにはどうすればいいのか? 「人間、性格は変えられないので、ストレスをうまく発散させることです。代替療法ではアロマセラピーや温泉療法が効果的。普段から手頃なストレスに向き合うようにするのも、自律神経のトレーニングになります」。

大切な役割は生体防御。強烈な酸には理由がある

胃が痛いからと薬を飲む前に知っておくべきことがあると川嶋先生は言う。胃は、食べ物と一緒に口から入ってきた細菌のほかにも、鼻から入ってきたごみや有害物質が痰となり、繊毛の働きで胃に送られ、解毒される。

胃酸は、生体防御のために強烈な酸性である必要があるのです。もう一つ、胃酸には重要な働きがあります。たんぱく質をペプトンまで分解するペプシンという酵素は、酸性の環境下で働くもの。胃酸を抑える薬を飲むということは、細菌にどうぞいらっしゃいと言っているようなもので、分解できずに残ったたんぱく質が腸から吸収されて血中に入ると身体が防御反応を起こし、アトピーやアレルギーを引き起こす原因になってしまいます」

人間が年をとれば胃も年をとるし、横隔膜の締まりが悪くなるのは当然のこと。加齢を受け入れ、いつまでも若い時の食べ方を続けて薬に頼るのではなく、年相応の食べ物、食べ方を意識することが大切だという。

胃の調子の良し悪しは自分の生活のバロメーターです。医者まかせにせず、自分の身体のことをきちんと知り、胃を悪くしない生活を心がけること。その上でさまざまな代替医療を用いて胃のケアをしてほしいと思います」

川嶋 朗先生

東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、准教授、医学博士。漢方をはじめとするさまざまな代替、伝統医療を取り入れ、西洋近代医学と統合した「統合医療」を担う。日本統合医療会理事、日本抗加齢医学会評議員。『病気にならない体をつくる ドライヤーお灸』(青山出版社)など著書多数。http://www.twmu.ac.jp/AWNML/N/top/

書籍>
『医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト』(アスコム)。多くの患者と向き合うなかで気づいたQOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)を充実させるためのヒント集。

(TRINITY48号より)