医師の養生~川田浩志先生(1)

患者の健康のために奔走する医師の方々。
驚きの若さと意欲を持ち、日々パワフルに診療にあたるドクターたちの養生法。
先生方の24時間&健康ハウツーを大公開!

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東海大学医学部血液内科准教授
川田浩志先生
医学博士。東海大学医学部血液内科准教授。著書に『見た目が若いと長生きする』(筑摩書房)他
http://ameblo.jp/antiagingworld

Q:あと1週間の命だったら、何をしますか?
A:残される家族へ生きていくための羅針盤をつくっておきたいと思います。たとえば子どもたちに、毎年どう生きると良いかを語りかける動画を用意することです。

エビデンスに基づく「サクセスフルエイジング」

長寿の分かれ道は遺伝ではなく生活習慣の積み重ね

私が目指しているのは、自分のポテンシャルを100%発揮しながら年を重ねる「サクセスフルエイジング」です。身体の調子が良ければ世の中も良く見えますよね。そんな好循環が結果的に長生きにつながると思うのです。

今、高齢者の割合が約24%ですが、今後20年、30年経つと40%を超える時代も来るわけです。生活習慣病が病気の3分の1を占めていますので、高齢者が増えるほど医療費もかさみます。今の日本は、成人一人あたりの受診回数が他の先進諸国に比べてとても多いですので、このままでは医療経済が破綻してしまうかもしれないですよね。ですから、次世代に負担をかけないためにも長生きを目指すならば、簡単には病気にならないよう、健康レベルを高く維持する必要があります。

では病気になる可能性として遺伝的な影響もあるかというと、一卵性双生児と二卵性双生児の寿命を比較した研究では、遺伝性の病気の要因は25%に過ぎず、寿命を規定している75%は環境要因であることが分かったんですね。つまり、生活習慣が違えば、多くの病気を未然に防ぐことができるということです。

有酸素運動をすると長寿遺伝子も目覚め始める

老化には、細胞のなかの遺伝子の端にある「テロメア」という構造が関係しています。テロメアが細胞分裂の回数を規定しているのですが、分裂するごとにテロメアが短くなり、短くなり過ぎると細胞分裂ができなくなるので、組織の細胞が新しく入れ替わらなくなり、機能も低下し、老化していくわけです。

そして有酸素運動をする人ほどテロメアがより長く保たれているという研究結果や、一卵性双生児でも有酸素運動をしている人のほうがテロメアが長く、長生きだというデータもありますから、テロメアの構造は先天的ではないのですね。どれくらい有酸素運動を行う必要があるかというと、エビデンス的には1日15分で死亡率が14%低下し、さらに15分ずつ増やしていくと、4%ずつ下がっていきますが、100分以上行っても、死亡率の減少は見られません。

有酸素運動を実践することで、新陳代謝が活発になり、酸化ストレスに対する防御能力も向上して老化の進行にブレーキがかかるのです。

川田先生の健康24時間ライフスタイル

4:30 起床・起床後は60~90分の有酸素運動
毎朝トレーニングマシンを使用して、身体をしっかり動かす。

8:00 始業
仕事タイム・食事には地中海風を取り入れる


地中海食をベースにした食事。普段の和食に野菜、果物をもっとプラスすると◎。
階段を使うなど普段から筋肉を鍛えています。

20:00 帰宅
万能万歩計「fitbit」で1日の活動を確認
1日の運動量や睡眠時間が記録され、パソコンに保存。長期間の体調管理に役立てている。交感神経系が緊張したり、脱水になってしまう可能性があるため、基本的に夜の運動はしない。

22:30就寝・睡眠時間は平均7時間
日によって眠る時間は5~8時間など異なるが、平均すると、最も死亡率が低い7時間をキープしている。

(TRINITY49号より)